SF映画が描く未来って、どれくらい環境に優しいのだろう?
そんな疑問に答えるべく、「デカボスコア」を算出・提供するEarth hacksのメンバーが、SF映画をデカボ(脱炭素)観点で議論していくのが、本連載「デカボ映画格付け会議」です。
第1回で取り上げるのは、SF映画の金字塔であり世界中で愛される「スター・ウォーズ」シリーズ。ライトセーバー、フォース、タイ・ファイター…同シリーズでもお馴染みのこれらは、果たしてデカボなのでしょうか?
※本企画はフィクションをもとにした仮想的な視点による評価であり、実際のデカボスコアとは異なります。
ライトセーバー:ヨーダの使い方はデカボ
──スター・ウォーズシリーズでお馴染みのライトセーバーはフォースを利用して数千℃のプラズマの刀身を出現させています。それだけのエネルギーを人間の力だけで出現させるというのはかなり「デカボ(脱炭素)」な武器なのではないかと思います。
デカボだからといって、必ずしもあらゆる環境面によいとは言えない点は、ご理解ください。数ある環境への影響のうち、脱炭素(デカボ)にフォーカスしてお話していきたいと思います。
プラズマは原子と分子が分離した状態で、半導体の製造や金属の溶接に使われる等、現実でもさまざまな場面で活用されています。それだけのエネルギーを出力することができるのはすごいですね。武器としてではなく、他の用途に用いることができるならばデカボに貢献するかもしれません。どんな仕組みでプラズマが出現するんですか?
──ヒルト(柄)内にあるカイバー・クリスタルがフォースと共鳴しプラズマを発生させる仕組みだそうです。
気になるのはカイバー・クリスタルですね。クリスタルということは、おそらく採掘が必要ですよね?
──カイバークリスタルはかなり希少な鉱物であり、銀河系各地の星々に存在しているという設定です。採掘は必要ですね。
現実世界でも鉱物の採掘には大型機械を使用しているので、CO2を排出します。さらに、採掘後の鉱物の輸送や加工工程についても機械を使えばCO2を排出します。デカボスコアを算出する際にはその製造工程でどれだけCO2を削減する工夫があるかという点が重要なポイントになります。
ライトセーバー自体が低排出で利用できるとしても、原材料の調達の観点から考えると、やや疑問が残りますね。もしかしたら、採掘したクリスタルを他の星に運ぶ際に、重力影響圏を出るときの動力エネルギーで莫大なCO2排出を排出している、なんてこともあるかもしれません。クリスタル以外にも、柄の部分の製造工程でもCO2を排出していることが想定されます。
ちなみにライトセーバーの使用期間はどれほどですか?製造時の排出が多くても、何十年も使い続ければ1年あたりの環境負荷は下がります。──戦いの中では壊れたりもする一方で、シリーズの中では世代を超えて受け継がれる描写やセーバーを修理するといった描写もあります。ちなみに、ヨーダはかなりデカボなライトセーバーの使い方をしていますね。
もし短期間で壊れたとしても再利用することが可能であれば、環境負荷は低減できそうですね。クリスタルさえ無事であれば、柄の部分だけを取り替えて再利用するとか。
日常生活でも、服や家具等を廃棄せずに修理して使い続けることはデカボです。
──クリスタルさえ無事であれば、修復は可能かもしれません。
それなら、壊れるたびに丸ごと廃棄する場合に比べデカボだと思います。ちゃんと再利用されているのか、それとも壊れたら廃棄に等しい扱いになるのか、そこが重要なポイントですね。
DECARBO Judge
ライトセーバー:採掘コストが重いが、世代を超えた長期使用が見込めるならば高スコアが見込める。
フォース:使い手が何を食べるか?がポイント
──続いては、ライトセーバーのエネルギー源ともなっているフォースです。フォースは「生きとし生けるものに備わるエネルギー」であり、作品内では様々な能力を発揮させます。具体的には物理的にものを動かす、身体能力を強化する、テレパシーを行う…など。
化石燃料も電力も使わず物を動かせるなら、究極のクリーンエネルギーとも呼べるのではないでしょうか。ただ、そのエネルギー源がどこにあるのかで評価は変わりますね。
──どういうことでしょう?
フォースは人間の体から発されるものですよね。つまり人間がどこからエネルギーを摂取しているのかを考える必要があります。
人間はご飯を食べてエネルギーを摂取していますが、フォースを利用するのに食べ物が必要だとすると、何を食べているのかを考慮しないといけません。つまりエネルギーの原材料は何かという観点です。
例え、動物性タンパク質より植物性タンパク質の方がデカボなんです。だから、大量の餌が必要な動物の肉からしか得られない栄養素が必要なのだとすると、排出量が変わってきます。とはいえ、野菜に比べて肉の方が生産時の排出量が多いというのはあくまで現実世界での話であり、作品内では事情が異なる可能性もあるのですが。
──シリーズ内では「バンサ」という砂漠に生息する草食動物から取れるブルーミルクやバげンサビーフというのが定番の食品として登場します。ただ、それがフォースのエネルギー源になっているというわけではなさそうですね…。
エネルギーを食品から直接的に得ているわけでないのならば、フォースはかなりデカボですね。このあたりは想像、というか妄想するしかないですが(笑)
──現実世界でフォースを利用することができるならば、デカボな社会に貢献できそうですか?
そうですね。移動とか通信とかだと現代技術に置き換えてイメージしやすいですよね。化石燃料を使用している部分をフォースの力で代用できるのならば、かなりデカボに貢献すると思います。
例えば、フォースを用いて金属の加工や溶接ができるなら資源循環にも活かせると思います。採掘・加工・再利用を人のエネルギーで行えるのならばかなりインパクトがありますね。ただ、フォースを使える人が限られているという設定を考慮すると、リソース上の限界はありそうですね。
──フォースにはライトサイド(光明面)とダークサイド(暗黒面)の両面がありますが、これはデカボに関わりますか?
使い方次第ではありますが、仮に使用者がダークサイドに堕ちたとしても、フォース自体はデカボなエネルギーと言えるのではないでしょうか。ただ、禁欲主義的なジェダイの方が、欲望に忠実なシスよりもデカボに繋がりやすいかもしれません。
DECARBO Judge
フォース:物理的な作業への代替効果は絶大。エネルギー源によって評価が変わるのスコア算出に関しては要検討。
タイ・ファイター:帝国軍は環境に配慮している
──スター・ウォーズに登場する銀河帝国宇宙軍の乗り物「タイ・ファイター」にはイオン・エンジンという機構が採用されています。イオン・エンジンは高温部品を持たないため長寿命・低メンテナンスが特徴だという設定です。
メンテナンスが少なく長く使えるという点はデカボな技術と言えそうですね。使用期間が長いほど出撃1回あたりの排出量が削減できますから。
──加えて、タイ・ファイターにはソーラーパネルが搭載されていて、そこから電力を共有しているそうです。一方で反乱同盟軍が搭乗する「Xウイング・スターファイター」は燃料としてガスが必要とされています。
電力もソーラーパネルから供給されるのであれば、タイ・ファイターはかなり高評価です。となると、エネルギーの観点では、実は反乱同盟軍よりも帝国軍の方がデカボな可能性がありますね。
──ただ、イオン・エンジンの廃棄物には放射性物質が含まれるそうです。こうした廃棄物はデカボスコアに考慮されますか?
なるほど…。デカボスコアの算出にあたっては原材料の調達、製造、輸送、使用、そして廃棄に至るまで、製品のライフサイクル全体で排出された温室効果ガスの総量を把握し、CO2相当量に換算するんです。カーボンフットプリントという考え方に基づいているのですが、その観点では放射性物質は含まれません。
ただ、LCA(ライフサイクルアセスメント)の一部として、気候変動以外の環境への影響を評価する場合は放射性物質を考慮する必要があるかもしれません。
ーー目的とスコープによって変わる、ということですね。使用時のエネルギーだけで見ればCO2排出量が少なくても、原材料や製造工程、廃棄物を考慮する評価の場合は変わりますから、簡単には判断できませんね。
作品内の設定を全て把握することはできませんが、タイ・ファイターは「使用時のエネルギーに限定するならばデカボである」とは言えるかもしれません。
DECARBO Judge
タイ・ファイター:エネルギー面ではデカボな戦闘機。廃棄物の環境影響については詳細に検討が必要。
