見えないCO2を“重さ”で体感。安藤百花さんと巡る、ちょっと不思議なスーパー

見えないCO2を“重さ”で体感。安藤百花さんと巡る、ちょっと不思議なスーパー

普段スーパーで手に取る商品は、値段や味、産地で選ぶことはあっても、その背景にあるCO2排出量を意識する機会は多くありません。


もしCO2排出量を“重さ”で体感することができたら……。そんなアイデアを形にしたのが、去る7月25〜26日、東京ビッグサイトで開催された「TOKYO GX ACTION MUSEUM」に期間限定オープンした『デカボマート』。


一見すると、ごく普通のスーパー。しかし、手に取った瞬間、いつもの買いものとは少し違った景色を見せはじめます。普段から「買い物は投票」だと考えているモデルの安藤百花さんは、この体験を通して何を感じたのでしょうか。


ちょっと不思議なスーパーでお買いもの

そもそも、店名にもなっている「デカボ」ってなんだろう?というのが正直なところ。「デカボ」とは、脱炭素をもっと身近なものとして捉えるために生まれた考え方です。CO2などの温室効果ガスの排出量を減らし、地球温暖化の影響をできるだけ小さくしていこうという取り組みを、日々の暮らしの中から広げようとしています。


オレンジと青を基調としたデカボマートでは、商品の重さが“CO2排出量”(*注)をあらわしているのだとか。とはいえ、百聞は一見にしかず。安藤さん、早速入店してみましょう!


*本来、温室効果ガスにはCO2のほかメタンなどさまざまな種類がありますが、デカボマートではそれらを二酸化炭素に換算した「CO2e」を、わかりやすく「CO2排出量」と表記しています。

「安藤さんに体験してもらうミッションは、『夜ごはんのためのお買いもの』です。ぜひ商品を持ちながら比べてみてください。ただ、正解はないので、いつものお買いものと同じように、自由に商品を選んでみてくださいね」とスタッフさん。


店内には、食材、飲料、日用品など、スーパーで見慣れた商品が並んでいます。お肉、野菜、きのこ、の3種類をゲットするべく、いざ売り場へ。

日頃から料理をするという安藤さんがまず探し始めたのは、夕食の主役となるお肉。


牛肉はずっしりと重く、鶏肉は驚くほど軽い。手に取って比べながら、少し考えます。


「今日は炒めものを作るイメージで、普段からよく使う豚肉にしようかな」

続いて野菜のコーナーへ。並んだ野菜を一つずつ持ち上げて比べる安藤さんは、少し意外そうな表情を見せました。


「大根は、実際は重いのにここではすごく軽いです。『施設栽培のピーマン』は実際は軽いのに結構重たい……」


普段身体が覚えている「重さ」とのズレに、不思議な感覚を覚えます。

「豚肉に合わせてピーマンを選びました。『有機・近郊栽培』と書いてあるものが美味しそうだったし、施設栽培のものより軽かったので」


同じきのこでも、『原木乾燥しいたけ』『菌床生しいたけ』『原木生しいたけ』で手に伝わる重さは異なります。安藤さんは、いちばん美味しそうなイメージの『原木生しいたけ』をチョイス。

その後も、トイレットペーパーや洗剤、スプーン、バッグなど、食材以外の商品にも手を伸ばす。木製とプラスチック製のスプーンを持ち比べると、「なるほど、プラの方が重いです」と納得した様子。


見た目だけではわからなかった商品の背景が、重さという感覚を通して、少しずつ立ち上がってきます。

すべての商品を選び終えたら、最後はセルフレジへ。画面に表示されるのは金額ではなく、選んだ商品のCO2排出量です。


気になる結果は……「ナイスデカボ!」。どうやらCO2排出量を抑えたお買いものになっていたようです。

「やったぁ! 直感で選んだんですが、環境に良い選択になっていたみたいで嬉しいです」

「買いものは投票だと思っています」

「食べることは生きること」。Instagramでそう綴る安藤さんは、料理専用のアカウント「momoka_gohan」や、食事と暮らしをテーマにしたYouTube『台所日和』を通して、日々の食卓を発信しています。


「たくさんある食の選択肢の中から、自分で選べること。そのことの豊かさを再認識するきっかけになれば」と語るように、食べることはもちろん、その食材がどのように作られ、どんな背景を持っているのかにも、日頃から自然と目が向いているといいます。

「買いものは投票だと思っています。もちろん、そのときのお財布の事情とも相談しますが、例えば卵なら、できるだけプラスチックのパックを使っていないものを選ぶようにしています」


食材以外でも、その考え方は変わりません。


「物が作られた背景だったり、自分がいいなと思うことに、できるだけお金を使いたいなと思っています」


日々の買いものは、どんな作り手や価値観を応援するかという、小さな意思表示でもあるのかもしれません。

好きなものの“重さ”を知る

衣類売り場では、染め替えられたシャツの軽さにも目を留めました。


「染め替えシャツは、通常のシャツよりも軽いですね。普段のお買いものでも、古い服を染め直したものは風合いも好きで買うことがあります。そういう取り組みが結構好きで」


日頃から大切にしてきた選び方が、今回の体験を通して、より確かなものになったようでした。

一方で、お買いものの中で最も印象に残ったと話してくれたのは、レザーのバッグ。


「レザーのバッグは簡単には持ち上げられないくらい重くて、びっくりしました。私は学生時代にバッグの制作を学んでいて、レザーは大好きでよく使っていた素材だったので、少しショックでしたね」

好きなものだからこそ、その背景を知ったときの戸惑いも大きくなります。けれど、CO2排出量が多いと知ったからといって、すぐに「選んではいけないもの」になるわけではありません。


背景を知ったうえで、それでも選ぶのか、別の選択肢を探すのか。その都度、自分で考えて選んでいくこともまた、豊かな買いものなのかもしれません。


今回の体験を振り返り、安藤さんはこう話してくれました。


「CO2は目に見えないし、普段はどのくらい出ているのかわかりません。だからこそ、こうして重さで感じられたことで、意識しやすくなった気がします。短い時間の体験でしたけど、いい経験でした」

見えないものを、重さとして体感してみる。


それだけで、いつものスーパーは少し違った場所になります。値段や味だけではなく、その背景まで想像しながら商品を手に取る。その視点が、これからのお買いものに、新しいものさしを一つ加えてくれるのかもしれません。

安藤百花(あんどう・ももか)


東京生まれ。モデル・衣食住研究家。

「ちょうどいい暮らし」を探究し、モデル、音楽、写真、執筆、食、ものづくりなど、ジャンルにとらわれず活動している。日々の暮らしの中にある美しさや心地よさを、自身の視点で見つめ、さまざまな表現へとつなげている。

草木染めを軸にしたプロジェクト「YAO」を立ち上げ、ディレクションを務める。


Instagram:momoka_031