私の地球漂流記 Vol.3 つぐみ、雨にけむる奥多摩・鳩ノ巣渓谷へ。【後編】

私の地球漂流記 Vol.3 つぐみ、雨にけむる奥多摩・鳩ノ巣渓谷へ。【後編】

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若手の表現者が地球の美しさに出会う旅を通して、自身と地球の未来を考える連載「私の地球漂流記」。

東京・奥多摩の鳩ノ巣渓谷を歩いたつぐみさん。前編では、キャリア10年目を経た現在地について伺いました。後編では、モデルと俳優という“見られる仕事”を続けるなかで考えていることから、これからの未来へのまなざしを辿ります。


自分という器で、何を伝えられるか

モデルとして10年以上活動し、近年は俳優としても活躍の幅を広げるつぐみさん。自分自身の身体を通して何かを表現するふたつの仕事は、彼女のなかで互いにつながっているといいます。

「モデルでは、視線や指先の動きなど、細かい部分まで気にします。人間って無意識にいろいろ動かしているけれど、それらを俯瞰して微調整しているんです。それが俳優のお仕事でも生きている実感がありますね」

自分の身体がどう動き、他者の目にどう映るのか。その細部まで捉えられるからこそ、意図した表現と実際の見え方のズレにも敏感です。

「他人にどう思われているかを、職業病ですごく気にしちゃうんです。写真や映像になったとき、自分が思っている見え方と、実際に人から見えている自分が一致しないこともある。『こういうふうに感情を見せたい』『こういう人として見えている状態のキャラクターでありたい』というのと、実際の見え方がずれると、すごくストレスになります」

だからこそ、俳優として大切にしているのは、演じる役をできる限り深く理解すること。

「その役のことを一番理解しているのは自分、という状態にしたいんです。全部を理解することはできないけれど、その役に近しい存在になれるように頑張りたい」

ファッションの世界でも、その姿勢は変わりません。服そのものだけでなく、その背景にあるブランドの物語や意図を汲み取り、自分という媒体を通して届けていく。

「私が着たことで服を見てもらえたり、ファッションストーリーなら、そのブランドのものを見てもらえたり。私を通して何かを届けられることが、すごく面白いです」

役の感情、物語、服が持つ背景。自分という媒体を繊細に扱いながら、その向こう側にあるものをできるだけ正確に届ける。そこに、つぐみさんはモデルと俳優、ふたつの仕事に共通する面白さを感じているようです。

正義がちゃんと勝つ世界であってほしい

「自分はすごくメタ認知するタイプ」と話すつぐみさん。一方で、自分の好き嫌いや「こうあってほしい」という思いに対しては、驚くほどまっすぐです。

「正義感がすごく強いんです。ちゃんと頑張って、ちゃんと実力がある人が認められてほしい。誰かを蹴落としたり傷つけたりするんじゃなくて、真っ当な形で勝てることを自分が証明したい、という気持ちがあります。素敵な人が正しくない形で押し潰されてしまったことも、自分自身が悲しい思いをしたこともあるから」

その正義感は、社会や地球について考えるときにも顔を出します。

「正しくないものがまかり通らないで、ちゃんと正しいことが正しいとなる社会であってほしい。ただ、『正しさ』は諸刃の剣です。正しさを押しつけることで、誰かを傷つけることもありますよね」

もし地球がひとりの人間だったら、どんな言葉をかけたいですか? そう尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「『頑張ってるね』って言いたいかも。環境問題にしても戦争にしても、いろんな正義が戦っていて、本人が一番苦しそうだと感じます。ひとつの『正しい答え』があるわけではなく、何かを良くしようとすることが、別の場所では新たな問題を生んでいるかもしれない。そういう複雑さを考え始めると、何が正しいのかわからなくなることもあります」

私たちが暮らす地球を、遠くにある巨大な環境問題としてではなく、目の前にいるひとりの存在のように想像してみる。その答えには、つぐみさんの正義感と同時に、どこか労わるようなまなざしも感じられました。

「光の道」を歩んでいく

10年以上のキャリアを経て、これから同世代と共有したいことを尋ねると、つぐみさんは好きな小説に登場する言葉を挙げました。

「舞城王太郎さんのホラー小説に出てくる言葉なんです。すごく怖い作品なんですけど、根底にあるのは愛と正義で。いろんな不条理があっても、それに負けずに『私は光の道を歩まねばならない』というシーンがあって、すごく共感しています」

何が正しいのか簡単には決められない世界でも、自分が信じる方向へ進んでいく。そんなつぐみさんの未来には、まだ見てみたい景色がたくさんあります。

「もっといろんな役をやりたいです。自分の知名度とか仕事の幅が広がって、いろんな作品で、いろんな人に出会えることが楽しみ。映画とかドラマとか舞台とか、ジャンルに関わらずやりたいです」

これから漂流してみたい場所は? という問いにも、まだ見たことのない世界へ向かいたいという答えを返してくれました。

「アマゾン川を漂流したいです(笑)。動物が大好きなので、野生の動物を見たい。南アフリカとかも行ってみたいですね」

雨と霧に包まれた鳩ノ巣渓谷で、吸い込まれそうな川を覗き込み、水面の光について話していたつぐみさん。

キャリアについては、まだ「混沌」のなか。それでも、自分が好きなものにはまっすぐで、進みたい方向には迷いがありません。

いろんな不条理に出会っても、光の道を歩んでいく。まだ知らない役、まだ知らない人、そしてまだ見たことのない地球へ。つぐみさんの漂流は、これからも続いていきます。

つぐみ


2016年7月、高校在学中よりモデル活動を始める。数々のファッション雑誌、ブランドのショーやLOOKBOOK、広告に出演。2019年にはパリコレクションにも出演し、世界に挑戦の場を広げ活躍中。役者としての活動の幅も広げ、多数のMVや広告出演の他、最近の出演作として、映画「蟲毒」「狂骨」、また、2025年にカンテレ×FOD『MADDER(マダー)その事件、ワタシが犯人です』にてレギュラーを勝ち取り、他、舞台「七つ数えて」でメインキャストを演じるなど、作品を重ねている。2027年1月8日(金)公開の映画「高校生家族」では、家谷家と同じクラス(1年3組)かつ、家谷家の飼い猫・ゴメスと同じ美術部員・早野千聖役を演じる。

STYLING

inner tops: agnes b.

tops: MARNI

short pants: minä perhonen

shoes: Salomon (ON TOKYO SHOWROOM)

necklace: teshigoto shiori