私の地球漂流記 Vol.3 つぐみ、雨にけむる奥多摩・鳩ノ巣渓谷へ。【前編】

私の地球漂流記 Vol.3 つぐみ、雨にけむる奥多摩・鳩ノ巣渓谷へ。【前編】

若手の表現者が地球の美しさに出会う旅を通して、自身と地球の未来を考える連載「私の地球漂流記」。
第3回は、東京・奥多摩へ。15歳でモデルとしてキャリアをスタートし、近年は俳優としても活躍の場を広げるつぐみさんとともに、雨に濡れた木々と渓流が広がる「鳩ノ巣渓谷」を巡りました。キャリア10年目を経た現在地や、モデルと俳優というふたつの仕事、これからの未来について話を聞きました。


キャリア10年を超え、今はまだ「混沌」の中

15歳でモデルとして活動を始めたつぐみさん。幼い頃から芸能の世界に惹かれ、物心がついた頃には、表舞台に立つことを志していたといいます。

「小さい頃からテレビをずっと見ていたし、昔のドラマも見漁っていました。アイドルを見ながら、テレビの前で歌ったり踊ったりしていましたね。いつからか覚えていないほど前から、表に出る仕事がしたいという憧れがありました」

中学生の頃、つぐみさんが「ミューズ」と呼ぶ憧れの女性が所属する事務所へ履歴書を送り、モデル事務所へ。以来、国内外のファッションショーや雑誌、広告などに出演し、近年は念願だった俳優としての活動も始めています。

「気づけばキャリアは10年を超えましたが、実感があまりなくて。自分の体感とは比例していない感じがあります。現在26歳ですが、若い頃に『25歳にはここまで到達しているだろう』と想像していた場所まで行けているのだろうか、と内省することも多いです」

幼い頃から憧れていた世界に入り、モデルや俳優として経験を重ね、叶えた夢もたくさん。それでも、その歩みはかつて想像していたものとは少し違っていました。今の自分を一言で表すなら、「混沌」だといいます。

「自分が好きな監督の作品に出たいとか、モデルとしてもこうなりたいとか、目標はあります。でもこれまで、いい意味でも難しい意味でも、想像とは全く違う歩み方をしてきたので、最近ではその曖昧さを受け入れられるようになってきました。もともと、かなり白黒つけたい性格で、どっちつかずの状態が苦手なんです。でも近頃は、どんな状況も一旦そのまま受け入れて楽しめるようになってきました」

「吸い込まれそう」な場所に惹かれて

奥多摩の中でも、特に変化に富んだ地形が広がる鳩ノ巣渓谷。巨岩や奇岩に囲まれた多摩川は白丸ダムと繋がっています。ダムで貯められた水は水力発電によって “東京産” の電力となり、「東京さくらトラム(都電荒川線)」などの運行に使用されています。

この日の鳩ノ巣渓谷は、雨に濡れた木々の間を霧が漂い、谷底には多摩川が勢い良く流れていました。

初めて訪れたこの場所の印象を聞くと、つぐみさんは「空気」と答えました。

「開けていて呼吸がしやすい場所もあれば、窪みのある岩など少しおどろおどろしい雰囲気の場所もあって。場所によって空気がすごく違いました」

渓谷を一望できる小高い岩の上へ。眼下を流れる川を覗き込むと、その高さに思わず足がすくみます。

「なぜかわからないけど、下に流れている川に吸い込まれる感じがします。飛んじゃいそうになって、危ない危ないとすぐに戻りました(笑)。こんな感覚になったのは初めてです」
「怖かったけれど、水は昔から大好きなんです。運動は基本的にあんまり得意じゃないんですけど、水泳だけはできて。水の中を見たいから、ゴーグルをつけてプールの床を這うように泳ぐのが好きなんです」

水の中が特別なのはなぜなのか。

「水の中って時間がゆっくりしているし、重力も違うじゃないですか。水面がキラキラしているのを見たり、水族館で光が反射して壁にきらきら映っているのを見たり。そういうのを見ているうちに数時間経っていたりします」
「星も大好きです。帰る時もいつも上を見ながら、『今日見えるね』とか言いながら歩いています。今度、友達と星を見に行こうって話しているんです」

水中や水面で揺れる光や、遠くで輝く星。ただ眺めていたくなるものが、つぐみさんの日常にはいくつもあるようです。

自分の欲望を叶えてあげる

水や星のように、ただ眺めているだけで心が満たされるもの。つぐみさんにはもうひとつ、幼い頃から変わらず夢中になっているものがあります。

「アイドルがずっと大好きなんです。特にBiSHは長年推していて、本当に何度も人生の救いになりました。解散したあとも、もちろん曲は聴き続けていますし、ライブ映像も見返します。一回好きになったらずっと好きなんです」
「ライブや舞台を見にいくと、セロトニンが出る感じがします。『今月ライブがあるからちょっとマジで踏ん張ろう』みたいに、日々を頑張る糧になっています」

忙しい日々のなかで、好きなものに会いにいくこと。それはつぐみさんにとって、単なる息抜き以上の意味を持っているようです。

「私は、結構頑張り続けちゃうタイプなんです。一回止まってしまったら、今まで築いてきたものがぷつんと切れちゃいそうで、あまり長く休暇を取れないし、しんどくても頑張れちゃう。だからこそ、自分が好きなことをちゃんと把握して、ちょこちょこ栄養補給しながら、潰れないようにしたいなと思っています」

そんなつぐみさんが最近大切にしているのが、自分の中に浮かぶ小さな欲望を、できるだけ見過ごさないこと。

「食べたいのに食べられなかったとか、行きたいところに行けなかったとか、が本当に嫌で。自分の中に “ちっちゃいつぐみちゃん” がいる感覚で、彼女の欲望を叶えて幸せにしてあげないと、と思っているんです」

水面を眺めること。星を探すこと。推しに会いに行くこと。食べたいものを食べること。大きな目標へ向かって走り続けるだけではなく、自分の内側から聞こえてくる小さな「好き」や「やりたい」にも耳を澄ます。

「混沌」のなかでつぐみさんが見つけつつあるのは、先の答えではなく、今の自分をちゃんと喜ばせながら進んでいく方法なのかもしれません。

▶︎後編に続く


つぐみ


2016年7月、高校在学中よりモデル活動を始める。数々のファッション雑誌、ブランドのショーやLOOKBOOK、広告に出演。2019年にはパリコレクションにも出演し、世界に挑戦の場を広げ活躍中。役者としての活動の幅も広げ、多数のMVや広告出演の他、最近の出演作として、映画「蟲毒」「狂骨」、また、2025年にカンテレ×FOD『MADDER(マダー)その事件、ワタシが犯人です』にてレギュラーを勝ち取り、他、舞台「七つ数えて」でメインキャストを演じるなど、作品を重ねている。2027年1月8日(金)公開の映画「高校生家族」では、家谷家と同じクラス(1年3組)かつ、家谷家の飼い猫・ゴメスと同じ美術部員・早野千聖役を演じる。

STYLING

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